『平和な星』 –2–
第2章 ピースフル星
「あーちゃん、広告を止めてくれ」
ピースフル星が近づいたときにカイザーが言った。
「今回は正式な依頼じゃないからな。退治屋っていうことを隠して入るんだ。」
宇宙船おっとっとは、その周囲に派手な広告をまき散らして
いたのだ。曰く『退治屋カイザー』。
「買い付けに来た辺境の商人って感じ?」
ミーナがサリー風の衣装を巻いて現れた。
ニャニャ星人であると一目でわかる背中の羽をちゃんと隠している。
「あっ、いつそんなの買ったんだよ!」
いつも自分の買いたいものを止められるカイザーがミーナにくってかかっている。
「やれやれ」
フェイスは小さな笑みをもらすと、子供のような二人の喧嘩をほおっておいて、着陸の準備をはじめるのであった。
『ようこそピースフル星へ』
ピースフル星の宇宙港は広々とクリーンで、中央に浮いている歓迎ボードを中心に、いくつもの大型宇宙船が優美に行きかっていた。
カイザーの宇宙船おっとっとは改造が加えてあって、その気になればそこらに出没する宇宙海賊船とも十分戦える性能を備えているのだが、がたがたと音をたてながら着陸しようとしているその姿では、どう贔屓めにみても小さな中古のバンクルーザにしか見えなかった。
進入口から降りていくに従って、方向指示信号が点滅するのだが、それに沿って到着した所は中央から随分離れたポートだった。
「何、この扱い、頭きちゃう!」
羽を隠しているミーナにとって、飛ばずに長い距離を歩くのは苦痛なのだった。
「税関だ。通れ。」
進んだ宇宙港には珍しく、無人ゲートではなく役人が一人たってカイザーたちに向かって顎をしゃくった。
「ちっ。なんだよ、偉そうに。」
ゲートを抜けるため、それまで頭から被っていた布をはずしてカイザーの金髪が外に流れでたとたん、役人の態度が変わった。
「ようこそピースフル星へ。こちらへどうぞ。」
びっくりするような笑顔で案内された別のゲートを抜けると、平面移動ブースにより、3人はいきなり中央出口に到着していた。
『戦争のない星、退治屋の必要ない星。ピースフル星のダマール首相から歓迎の挨拶をいたします』
溢れる光と音。美しく着飾った住人たち。
そこここに立つ案内ボードでは、柔和な顔を白い髭で覆ったダマール首相と思われる人物の政権放送が流れていた。
「退治屋は必要ないってさ」
カイザーはやや自嘲ぎみにつぶやいた。
「さあって、この後はどうすりゃいいんだ?」
カイザーの声を聞いて、ミーナとフェイス は「またか」という顔をした。
『いつだって考えなしに行動するんだから』
ほとんど口に出そうとしたとき、3人の前にリムジンの高級車がすべりこんできた。
「お客人がた。ダマールホテルにご案内します。」
いきなり車のドアがあいた。
「ああ?さっきの税関!」
by stagezero | 2006-04-09 17:22 | 退治屋稼業